あるうどん屋さんに行くと、僕は必ず「温玉生醤油おろし 冷たいやつ 大」を注文する。メニューの名前が長いので、厨房の人々は「おろし 大 冷たいの入りました〜!」と省略して叫ぶが、今後も僕が「おろし 大 冷たいの ひとつ」なんて真似することはない。一部の集団でしか通用しない言葉を脳にインプットしたくないのだ。
フリーライターは基本的に、携わる雑誌の読者にあわせて文体や使う言葉を調整して記事を書く。だから「シームレスに」「インタラクティブに」「プライオリティが高い」とかをバンバン使う場合もあれば、横文字をなるべく減らして「そのままの流れで」「どちらからも行き来しやすい」「優先順位が高い」と書く場合もある。前者は他人が使っている言葉をそのまま借りてくるだけだから導入するのは簡単。後者は意味をかみ砕いて分かりやすいように考える手間がある。どちらの書き方も軽くできるようにするには、難易度の高い後者の書き方に慣れないといけない。
つまり、自分の脳内にある標準の語彙ボックスは、なるべくどんな人にでも通じる言葉だけで満たしたいのだ。これをごちゃまぜにすると、同僚に「最近の政治家はなってね―なー」と言われたとき「それはプロレタリアートのルサンチマンであり、インターナショナルな観点からすれば・・・」などと口にして一発でキモい&ウゼぇという印象を不動のものとしたり、まだ取引を始めたばかりの編集者とのメールで、「了解しましたwwww 明日までには対応できます。でも今日は(ry」とか書いて一発でキモい&ウゼぇという印象を不動のものとしたりする。
そうやって気を付けてはいるけど、無駄な変換候補が一度こびりつくとなかなかとれない。こないだフロに入ったとき、心の中で「心地いい〜」とつぶやいたら、脳が「もしかして“心地いい〜 超心地いい〜”ではありませんか?」と聞いてきたし、原稿で「ガンガン購入しよう!」みたいな文章を書いたら「もしかして“ガンガングングンズイズイ購入しよう!”ではありませんか?」と横やりを入れられた。
以上の理由から、僕は「おろし 大 冷たいの」とは言わないことを、ここに誓います。
記事の更新が1日遅くなり、すいません。
2009年06月13日
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